「こんど越してきたジョンです」
春のある日、坂の多いこの街の、坂の中腹にある、ボロアパートに
ある一人の爺さんが引っ越してきた。挨拶に来た。
入居者のほとんどが学生ということもあり
引っ越してきたとしても挨拶に来るものなど滅多にいなかったのだろう
キョトンとする者が多かった
そわそわと粗品を受け取り部屋に入るものも多かったし
新聞の勧誘と思い居留守を使う者もいた
粗品があまったのでアパート以外にも近所の家々にも爺さんは挨拶を始めた
「こんど越してきたジョンです」
はて?コテコテの日本人…だよね!?
「変なやつが越してきたものだ」
と近隣住民は思った
そして近所の人たちは彼を
「ジョン爺(ジョンジー)」と呼ぶようになった
そんなジョン爺は年金暮らし。
いろいろあって安アパートに移り住むことにした。
理由はいろいろある。
都会の喧騒からほどよく逃れた場所に住みたかったこと。
お金が、長期的に見ると、底を尽きようとしていたこと。
というか前のマンションを騒音が原因で追い出された。
奥さんも、当然子供もいないため、より狭い、安い家を探していた。
そして見つけた。
坂の多いこの街の、坂の中腹にある、ボロアパート。
その名も
「コーポジェミニ」
彼が若かりしころ組んでいたバンド名と重なり、ここに住むことにした。
そして彼が引っ越してきた初日、ジョン爺の家から音楽が聞こえてきた
ジェミニゾーンのGabba Gabba Hey!
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