ジョン爺はロマンチスト
というほどではないが
あえていうなら「風情チスト」(?)
よく分からないが本人はそう思ってるらしい
風情のあるものがすきなんだとか
風情のあるものへの感受性が高いんだとか
常人よりもちょっとしたことに風情を感じることができるのだとか
なんか文化人ぶっているもよう。
そんなジョン爺は、
晴れ渡った空が大ッ嫌いである。
青すぎる空にムカッ腹が立つんだとか
若いころからそうだった
こんなに空が晴れ渡っているのに、外でできることが何もない!
スポーツなんてできない。
いくら晴れていようと部屋で楽器弾くかマンガ読むか寝るか
だからこれ見よがしに晴れ渡ってる青い空は
なんというか・・・
敵だ!と思っている
あいつら、外で健康的に遊べYo!っていってやがる
まっしろく輝く太陽はもはや脅迫じみてみえる
敵だ!
晴天は敵なり!
雨も嫌いだ!めんどいから
曇りisベスト
今日も少し晴れてる
さぞかしジョン爺少し機嫌が悪かろうと思ったが
なぜだかジョン爺は今日は機嫌がいい!
なぜなら
霧が出てるから!
霧!KILI!おー
KiLi KiLi マイ!
Gabba Gabba Hey!
前日のあめから一転、今日緩やかに晴れたおかげでか何でか知らんが
霧である!
晴天の日には決して出かけないジョン爺も
今日はチャーリー(その⑥ジョン爺と原チャーリー参照)をぶっ飛ばし!
いざ、アウトドア!
そう
霧の中をバイクで走るのがサイコーにお気に入り!
夜の街頭に照らされた霧も、なんかワンチェンとか出てきそうですばらしいが
昼の町を包み込む霧も風情があってよい
そう思いながらジョン爺ナンバーワン「霧ライダースポット」へ
そこはこの町を一望できる山へと続く登山道
走り屋たちが命を削った跡とかが霧の中から浮かび上がる
ちょっとでこぼこしているナイスな小汚さも良い
林の、木のにおいがするマイナスイオンの宝庫!
そして、
視界の悪い山道を抜ければそこは
野外ステージ!
霧の中にぼんやりと浮かび上がりそびえ立つ野外ステージがあるのだ
かつてはこのステージで毎年の夏、国中からすっごいアーティストを呼んで夏フェスが繰り広げられていた
毎年の夏、この山の上のステージからこの町に音楽が降り注いだ
そんな熱い時代があったのだ
今となってはフェスも行われなくなり、ただの廃墟ステージとなっている
「立入禁止」と書かれたビニールテープに囲まれ、今は人が入れないことになっている
・・・
だが、ジョン爺は知っている。
ステージ袖に、
だれかが隠したアコースティックギターがあることを!
ハードケースに入れられているシブいやつ
しかも弦をだれかが張り替えてるようだ
こっそりジョン爺も偶然弦がさびていて張り替えたこともある
たくさんサインが書いてあるからもはや誰のものか分からない
だからきっとみんなでつかってる。そんなギター。
ジョン爺はふらふらとステージにあがり
ステージ袖からおもむろにアコースティックギターを取り出す
最近また誰かが弾いたのだろうか、チューニングはさほど狂ってない。
ステージの真ん中で、あぐらをかいて歌いだす
ひとり夏フェス。幻想的な霧の中で
この町中に届くように
この町にむかって音楽をふらせるのだ
以前ここで行われてた、ここから降り注がれていたフェスの音とは比べ物にならないくらい小さい。
だが、こうしてここで、同じように、アコギを弾いてるやつがたくさんいる。
聞こえなくても届くかもしれない。
だからいつかまたここででっかいフェスが開催される確信を、ジョン爺も多くの町の人々も持っている。
フェスをもう一度!と祈って弾くやつ
もう待ちきれなくて弾き鳴らすやつ
ただ歌いたくて弾き語るやつ
そんなこのアコギを握り締めたやつらの思いが人を動かすんじゃないかって
ジョン爺は思っている。
昼の霧の中、
まるでスモックが焚かれ、太陽は白くて淡いハロゲン照明。霧の向こうにみえる青空は水色のLEDのよう
そんな風景
ジョン爺はバラードを歌いだした
霧の中から、古びたステージでこだました、大合唱のようなジョン爺の歌声が聞こえる。